あなたは代名詞が苦手ですか?と聞かれたら、「別に苦手ではない」と答える人がほとんどかもしれません。
しかし、日本人で代名詞を正しく使いこなせている人は、私の経験でいうと
ほぼ皆無です。
日本人は、代名詞が苦手、とも言えます。
しかし、英語を話したり書いたりするときに、代名詞が正しく適切に使えると、
あなたの英語はかなりあか抜けます!
この記事では、
なぜ日本人は代名詞が苦手なのか、ということや、
日本人が間違いやすいポイントにしぼって、書いていきますね。
実際に私が今まで見てきた間違いを元ネタにしていますので、あなたにもきっと覚えがあるはずです!
私は日本の大学で英文科を卒業し、カナダで語学学校を10年経営。フルタイムの翻訳の仕事経験もあり、英文法は得意分野です。マニアックな話ではなく、実際に使うための「代名詞」について解説していきます。
なぜ日本人は代名詞が苦手なのか

「代名詞」を活用しない人が多いなぁ、と感じます。
それもそのはず、日本語ってすごく代名詞を「活用しない」言葉なんです。
確かに、this=これ とか、 he=彼、とか、日本語で相当する言葉はあるんですよ。
しかし、実際に会話で出てこないことが多いです。
パターン1:省略する
Aさん、こんにちは!元気ですか?=「あなたは」元気ですか?
昨日Aさんに会ったんですよー。
○○って言ってましたよ=「彼は」○○って言ってましたよ
パターン2:名詞を繰り返す
Aさんこんにちはー!Aさん、お元気ですか?=「あなたは」元気ですか?
昨日Aさんに会ったんですよー。
Aさんが、○○って言ってましたよ=「彼は」○○って言ってましたよ
イコールの右側が、英語の通常のパターンなのですが、これ日本語やったらかなり違和感ありませんか?
あなたは元気ですか?彼は○○って言ってましたよ。
うーん・・・って感じですよね。
海外生活が長い日本人は、日本語の時にも代名詞を多用してしまうクセが出たりするのですが、自分の親や子どものことを「彼」「彼女」と言ってしまい、相手にけっこうな違和感を与えます。笑
- 昨日、お母さんに会ってね。彼女が、よろしくって言ってたよー。
- 息子が面白いこと言ったんだよー。彼、○○って言っててさー。
一瞬、「ん?彼女って誰?」「彼って誰?」ってなりますよね。笑
日本語だと、こうなので、日本人が英語をしゃべる時も、代名詞を省略してしまったり、名詞を何回も繰り返し使ったりという罠に陥ります。
しかし、英語では代名詞を使わないほうが、かなりの違和感を与えてしまいます。
ですので、英語を話したり書いたりするときには、意識して代名詞を使う必要があるのです。
代名詞の基礎知識

人称代名詞はモノも表す
人称代名詞は、その名のとおり、「人」を表すものがメインですが、実はこれには「モノ」も含まれます。
- I→私
- we→私たち(私を含む二人以上)
- you→あなた、あなたたち
- he→彼
- she→彼女
- it→それ(モノ)
- they→彼ら、それら(モノ)
これは大丈夫ですか?
習った覚えはあっても、実際に運用するとなると、思い込みが邪魔をして間違ってしまうパターンがあります。
1つの代名詞に2つ以上の意味がある
人称代名詞をややこしくしているのが、一つの代名詞が二つの意味に使われることがあること。
例えば、you →「あなた」もしくは「あなたたち」
つまり、単数も複数も同じ単語を使う!
they →「彼ら(人の複数)」もしくは「それら(モノの複数)」
つまり、人もモノも同じ単語を使う!
特に、theyは「彼ら」と覚えている方が多いので、「それら」という発想がなかなかできません。
そのため、リーディングで、ここのtheyって誰のこと?と混乱したり、ライティングで、モノの複数を表すのにtheyを使えなかったり、という問題が勃発します。
性別がわからない場合のthey
また、theyは(比較的最近のことですが)性別がわからない場合の、「単数の」代名詞としても使われます。
例えば
If a person studies at university, they can get a degree.
もし「とある人」が大学で勉強したら「彼もしくは彼女」は学位を取ることができる。
と書くことができます。
この「彼もしくは彼女」のところでtheyを使っているわけですね。
一人なのに・・・!!
違和感ありまくりですが、非常に自然な英語であり、日常会話でも使われています。
昔は、ここはheと書いたりしていたのですが、もちろん最近の状況(男女平等)を考えているとダメですよね・・・!
he or sheと書くこともできるのですが、若干面倒くさいためか、あまり使われなくなってきています。
文章のどこに置くかで形が変わる
英語でややこしいのが、目的語など他の場所で使われる場合は別の形になる、ということなのです。
例えば、「私」=I で言えば、
主格はI
所有格はmy
目的格はme
再帰代名詞はmyself
ですね。
「アイ、マイ、ミー」と唱えさせられた覚えがある方も多いと思います。実はこれはとても重要でして、完全に覚えてしまってください。
ただし、再帰代名詞も含めてください。つまり「アイ、マイ、ミー、マイセルフ」と唱えてください。
所有格は「~の」と、その名の通り所有を表したいとき。
目的格は、文章の中で目的語として使うとき。
再帰代名詞は、主語と目的語が同じ人やモノのときに、目的語として使う。
もしくは、特に「~自身」と強調したいときに使います。
例:I like myself. (私は私自身が好きだ。)
「再帰代名詞」って、このネーミングセンスよ・・・といつもながら文法用語には辟易させられますが、昭和のものなので勘弁してあげてください。
用語自体はあまり気にせず、「~自身」という意味の代名詞と考えてください。
所有格、目的格、再帰代名詞で間違いやすいポイント

所有格、目的格、再帰代名詞で間違いやすいポイントをあげておきます。
itの所有格はits(it’sとは別もの)
itの所有格はitsなのですが、これをit’s だと思っている人が多いです。
itsは「それの」という意味で、itの所有格です。
it自体がモノを表すので、所有すること自体が無いのでは?と思いきや、わりと出てきます。例えばcompanyなどですね。
例:The company went bankrupt and “its” employees became unemployed.
会社は破産し、「その(=会社の)」従業員は無職となった。
このitsを”it’s”と勘違いする人が多いです。ぱっと見、似てますもんね。
しかしこの両者はまったく違っており、it’sはit isの省略形なので主語+動詞の組み合わせであり、名詞としては使うことができません。
この「点」(アポストロフィーといいます)によってかなり違ってくるので、気を付けてくださいね。
their, them, themselvesは「モノ」にも使う
theyは「彼ら」と覚えているから、「それら」という意味とは結びつけにくい、という話をしましたが、それと同じで、
their→彼らの/それらの
them→彼らに/それらに
themselves →彼ら自身に/それら自身に
となります。
youは再帰代名詞だけ単数と複数が違う形
you は単数でも複数でも主格、目的格、所有格とすべて同じなのですが、再帰代名詞だけyourself (単数)とyourselves(複数)に分かれます。
「あなた」と「あなたたち」が同じ単語を使う、というのがそもそもややこしいというのもありますが、なぜか
あなた自身=yourself
あなたたち自身=yourselves
と、そこが分かれるのかい!という不思議な分かれ方です。
再帰代名詞をうまく活用できず、すべてmyselfにしてしまう
スピーキングやライティングでよく見られるのですが、
They should take care of themselves.
(彼らは自分自身をケアしなければいけない)
というような文章で、
They should take care of myself.
というように間違ってしまいます。
何が間違っているかというと、「彼ら」と「自分自身」は同じ人物たちを指しているので、theyという主語と呼応するように再帰代名詞はthemselvesにしなければいけないのですね。
しかし、再帰代名詞はmyselfを使うことが圧倒的に多く、他のyourself, themselves, himself, herselfといったバリエーションを使うことが少ないので、とっさに使えないわけです。
これはケアレスミスとも言えるかもしれませんが、主語と再帰代名詞が一致するように、注意が必要です。
所有代名詞を知らない
「アイ、マイ、ミー、マイン」と、4つ覚えさせられた方も多いと思います。
この最後の「マイン」は「所有代名詞」というのですが、人称代名詞の「所有格」つまりmy, your, his, her, their, itsという語たちとどう違うのか?
名前も似すぎているし、あまりにもややこしい。
所有代名詞は
mine
yours
his
hers
theirs
です。
これは私も取り上げるか迷いました。というのも、頻度がかなり低いからです。
私も実際に英文を書くときに、この所有代名詞を使う機会はほとんどないです。なので、とりあえず今は日常会話ができれば良い!という人はスルーしても良いです。
上級英語を目指す人は・・・知っておいても良いと思います。また、所有代名詞は書きなどよりも会話でよく使われる印象です。
所有代名詞は、簡単にいうと、人称代名詞の所有格+名詞の代わりに使うものです。my + pencil(私の鉛筆)=mine(私のん)なのです。
つまり代名詞のさらに代名詞、という感じでしょうか・・・
もちろん、pencilが無くなってしまって「私のん」だけでも何のことかわかる=直前などにpencilが出てきてお互いに了解があるというのが前提です。
もしくは、指さして「それ、私のん!」というイメージですね。(だから会話で使われることが多いのかもしれません)
一つ気を付けなければいけないのは、所有代名詞の中にはitの所有代名詞(それのん)というのが無い、ということですね。
モノがモノを所有することができないということなんでしょうか。謎です。
“it”は「それ」と訳す時と訳さない時がある

代名詞の中でもitというのはとてもよく使われるのですが、多くの人はごっちゃになって覚えていると思います。
覚えているというか、何となく同じものだと思っている。
何をごっちゃにしているかというと、itが大きく二つに分けられるということです。
①日本語で「それ」と訳すべき時
②日本語で「それ」と訳すべきではない時
この二つの種類があることを無視して、「it=それ」である、と考えている人が多いと感じます。
翻訳家になりたいわけじゃないから、日本語訳とか関係ないんじゃ?!と考えるのは間違いで、大いに関係があります。
というのも、②の「それ」と訳すべきでない時は、そもそもitに実体がないからです。
詳しく見ていきましょう。
itを「それ」と訳すべき時
これは多くの人が認識しているitの使い方ですね。
主には人称代名詞の目的格、つまり目的語が来るべき箇所に置かれるitです。
もちろん代名詞なので、前に出てきて何を指すかわかる場合に使います。
He likes eating sweets, but he won’t admit it.
彼は甘いものが好きなのに、本人は「それ」をどうしても認めようとしない。
このように、何を指すか(この場合は”likes eating sweets”ですね)が明らかで、itには「それ」という訳がきちんと付く、という状況です。
ちなみに、この例のように、名詞一語ではなくとも、「事実」全体を指すこともできます。
itを「それ」と訳すべきではない時
大きく分けて3つになります。
- 仮主語
- 仮目的語
- 漠然としたものを指す主語
仮主語
仮主語は、知っている人が多いですね。
It is A for B to Vの形で、BがVすることはAである。という意味を表すことができます。
例えば、
It is difficult for me to learn English.は、
英語を習得することは私にとって難しい。
という意味になります。
この場合、主語である”it”は「それ」ではないことはお気づきでしょうか?
訳には出ていませんね。
それもそのはず、このitはその名の通り、仮に置いているだけであり、本当の主語はto以下だからです。
だから基本的には「それは難しい~」ではなく「to Vすることは難しい」と訳します。
このように簡単な文章だったら良いんですが、少しレベルが上がってくると、よくある間違いが二つ。
- 読むときに「それ」と訳して読んでしまう。
- 書くときや話すときに、順番を間違えてしまう。
読むときに「それ」と訳して読んでしまう
この仮主語を使った英文はよく出てきます。
しかし上記のような簡単な教科書風の文章ではなく、けっこう複雑な文章として出てきます。
そうなると、It is A for B to Vの形であることが見抜けず、仮主語の”it”を「それ」と解釈してしまいます。
そうなると、直前の文章に出てきた名詞もしくは直前の文章全体を指すことになってしまい、本来は同じ文章の中のto以下を指すので、おかしなことになってしまいます。
文章が長かったり、動詞がisではなくwould beなど助動詞付きになっていたりすると、見逃しがちですが、小さなforとtoというサインを見落とさないようにしてください。
たまにforの部分が無い時があるので注意!
書くときや話すときに、順番を間違えてしまう。
一番多いのが
〇It is A for B to V
のところを、
×It is A to V for B
と書いてしまう間違いです。
つまり、
×It is difficult to learn English for me.
◯It is difficult for me to learn English.
ということですね。
ケアレスミスの場合もあるでしょうが、多くの人は、「順番は別にいいんじゃない?」と思っているか、あるいは、「後から付けたし」のようになってしまっていると感じます。
しかし、順番が違うと、文法ミスであり、れっきとした間違いですので、気を付けましょう。
これはかなりやりがちな間違いです!!
仮目的語
「仮目的語」という言葉が耳慣れないという人も多いと思いますが、こんな文章は見たことがあると思います。
This program makes it impossible to copy software.
このプログラムがソフトウェアのコピーをさせることを不可能にしている(このプログラムによって、ソフトウェアのコピーができない)
This program makes to copy software impossible.
と書くと、目的語の部分(下線部分)が長くなりバランスが悪いので、下記のように目的語部分にitを置いて、後からtoで補うのです。
This program makes it impossible to copy software.
仮目的語については、仮主語のコンセプトを理解していれば問題ないといえます。
というのも、頻度がかなり低いですし、使う動詞も限られているのです。
漠然としたものを指す主語
大きく、4つのパターンがあります。
1、曜日や日時を表す文
What day is it today?
今日は何曜日?
2、天気や明暗や寒暖を表す文
It’s very humid here.
ここはとてもむしむししますね。
3、距離を表す文
It’s about two kilometers to the town from here.
ここからその町までは2キロほどあります。
4、ばくぜんとした状況を表す文
How’s it going?
調子はどう?
よくある間違いとして、日本語から発想して「ここは」「今日は」などを主語にして文章を作ってしまうものがあります。
×Today is humid.
×Here is humid.
あとは、「距離は~」などと言いたいがために
×The distance is two kilometers…
といった文章も良く見かけます。
もちろん、これでも通じるのですが、不自然になってしまいます。
漠然としたitを会話でもぱっと出てくるくらい使いこなせると上級者の仲間入り?!
指示代名詞でよくある間違い

指示代名詞というのは、前に出てきたものを受けて、繰り返すのを防ぐために使うものです。よくあるのがthis/thatですね。
指示代名詞のthatは、会話で相手が話した内容のひと固まりを受けて指したり
例:That’s depressing! (それは悲しいね)
何かのエピソードを思い出すように話したり
例:He said he had met her at the party, but that was a lie.(彼はパーティで彼女に会ったと言ったが、それは嘘だった。)
しますが、基本的には「会話」で使います。
そして、”this”は、皆さんが思っている以上に使います。
例:We have theright to express our opinions freely. This is called freedom of speech.
私たちは、自分の意見を自由に表明する権利を持っている。これは言論の自由と呼ばれている。
このように、前の文章のカタマリもしくは文章全部を指してthisを使いますが、このような状況でthat やitを使う人が多いです。
しかし、thisを使ってください!thisが正しいです!
前の文章のことを言いたいときは、ライティングではthis!これはしっかりと押さえておきましょう。
自宅でマイペースに取り組める英文法通信講座。
講師Kumikoが赤ペン添削いたします♪


文法で行き詰まっているあなたへ。目からウロコの英文法学習法を詳しく解説するメール講座です。
受験で失敗したKumikoがその後、どのようにして翻訳者になり、さらに語学学校の経営をするまでになったのか。
その実体験から学んだ、効果抜群の英語学習法を7日間でシェアします。