ディクテーションとは?英語スパルタ校長が教える効果的なやり方5ステップ
ディクテーションは、英語音声を聞き、一語ずつ書き取る勉強法です。
ただし、リスニングが苦手な人なら誰にでも必要なトレーニングではありません。スクリプトを読めば意味が分かるのに、音で聞くと知っている単語が消える人に向いています。
反対に、スクリプトを読んでも単語や文法が分からない場合は、書き取りより先に語彙と精読が必要です。難しすぎる音声を何度も止めても、リスニング力より「聞き取れなかった疲労」がたまります。
私はカナダで語学学校を10年経営し、ネイティブ講師・日本人講師を含む延べ50人以上のトレーニングと教材開発を行ってきました。授業でもディクテーションを何度も指導しています。
生徒が最初に書いた紙は、赤字だらけになることがあります。ところが、聞こえなかった理由を一つずつ分け、同じ教材で「読む→書く→直す→もう一度聞く」を繰り返すと、赤字の入り方が変わってきます。私がディクテーションを勧めるのは、根性論だけではなく、何が聞こえていないかを紙の上で見えるようにできるからです。
目次
英語のディクテーション勉強法とは
ディクテーションって何?
ディクテーションは、日本語でいうと「書き取り」です。英語の音声を聞きながら、聞こえてきたものを、一言一句書き取っていくわけです。「文字起こし」とも言えると思います。
一言一句、書きとる、というのは簡単なようでいてなかなか難しいです。
| 今の状態 | ディクテーション | 先に行うこと |
|---|---|---|
| 読めば分かるが、音では聞き取れない | 向いている | 短い音声で書き取りを始める |
| 冠詞・前置詞・語尾をよく落とす | 向いている | 答え合わせで抜け方を分類する |
| スクリプトを読んでも意味が分からない | まだ早い | 単語・文法・精読を優先する |
| 長い音声を一度で書き取ろうとしている | 教材が難しすぎる | 10〜30秒程度へ短くする |
どんな人に向いている?
実際にやってみると、よくわかりますが、ものすごく時間とエネルギーを消費する勉強法ですので、基本的にド根性!体育会系!の人に向いています。
また、座学でしかできない勉強法なので、ある程度まとまった勉強時間を日常的に確保することができる人。
あとは、書いたり赤字で添削をしたり、といったことがあまり苦にならない人(ノートを取ったり、手帳を書いたりするのが好きな人)、マメな人が良いでしょう。
逆に、極端な面倒がりや文字を書くのが面倒と感じる人、ちょっとした隙間時間で英語学習を無理なく続けていきたい人などには、正直、あまりお勧めできないです。
ディクテーションの効果
リスニング力アップ
ディクテーションの一番大きな役割は、聞き取れない場所と理由を特定することです。
リスニングが苦手な原因はいくつもあります。スクリプトを見れば意味が分かるのに音では分からない場合は、耳で認識している英語と目で認識している英語の間にギャップがあります。ディクテーションは、知っている単語の音、弱く発音される機能語、音の連結など、ギャップの場所を見つけるのに効果的です。
私が指導した学習者でも、このタイプは赤字が減っていくのが面白いほど目に見えました。ただ書き続ければ全員同じように伸びる、という意味ではありません。答え合わせのあとに、聞こえなかった理由まで確認することが条件です。
その他の効果
リスニング力以外に、下記のようなスキルへの効果が期待できます。まぁ、これらはすべて相互作用がありますし、これらが合わさってリスニング力が伸びる、とも言えますね。
文法力が伸びる
なにせ、一言一句なので、冠詞や前置詞などの細かいところも含めて、ルールが自然に身につきます。
また、細かいところに意識が向きやすくなるので、文法が極端に苦手な人にも良いですね。
文法のルールを知ってはいるけど、なかなか実践できない、という人にもおすすめです。
構文の理解度が上がる
文法と通じるところがありますが、主語と動詞などの英文の構造を理解できるというのがありますね。
特に、どんな動詞が目的語を取るのか、受動態になるのか、など、もちろん文法上のルールはあるのですが、そういった規則を勉強するのが苦手だったり、覚えきれなかったりする人はもちろん、文法は理解したけど、いまいち実践できないという人には、文章まるごと書きとる、というこの勉強法は最適です。
文法も構文も、多読などの大量インプットをすれば自然と身に付くものなのですが、これには1年単位での期間が必要なので、ゴリゴリやって早回ししたい人にはこのディクテーションやシャドーイングをお勧めしています。
英文の発音のされ方を学べる(リンキングやイントネーションなど)
上でも書いたように、日本人の多くが「聞き取れない」と感じる理由の一番大きなものとして、耳で聞こえている英語と目で認識している英語とのギャップがある、というのがあります。
このディクテーション学習法では、耳で聞いたものを文字に起こす、という作業を通して、目でしか認識していなかった単語が、実際にどういうふうに発音されるのか、ということを体感することができます。
また、リンキング(単語と単語がくっついて発音されること)がわからないと、絶対に書き取りはできないため、こちらにも意識を向けることができます。
リンキングの説明を、画像にしてみました。↓
このリンキングというのは、日本人の学習者にとってけっこうクセモノで、これが原因で聞き取れていないことはかなり多いです!
単語力が上がる(スペルを含め)
「スペルを含め」とありますが、「書き起こし」なので、スペルのほうが主に効果は高いですね。
でも、ディクテーションの前に精読をやるので、おのずとインプットは増え、単語の数は増えるということはあります。
ただ、単語を増やしたいという考えではディクテーションはやらないほうが良いです。下で書きますが、ディクテーションに使う教材は自分が知らない単語がたくさん記載されているものは(自分のレベルより高いということなので)お勧めしません。
どれくらいで効果が出る?
私が集中的に取り組ませるなら、目安は1日30分×3か月です。1日だけ赤字だらけの紙を作っても、聞き方は変わりません。短い音声を決まった時間に続け、同じ種類の聞き落としが減るかを見ます。
毎日30分を全員に保証する数字として出しているわけではありません。仕事や家庭の都合で毎日できない人は、15分から始めてもかまいません。ただし、「時間ができたら長時間」より、週の予定に先に入れてください。
私は、勉強する時間と場所を先に決めることを「環境整備」と呼んでいます。英語を続けるうえで、教材選びと同じくらい重要です。
ディクテーション学習に必要なもの
ディクテーションをするにあたって、下記のものを用意しておきましょう。
教材
ディクテーションの教材の選び方とおススメの教材を、この記事の最後にまとめていますので、ご参照ください。
音声を止めやすいスマホ・PC
ディクテーションでは、同じ部分を何度も止めたり戻したりします。スマホやPCなど、数秒単位で戻しやすく、再生速度を変えられる機器を使ってください。
最初から低速で聞くのではなく、まず通常速度で聞きます。どうしても音の境目が分からない部分だけ速度を落とし、最後は通常速度へ戻してください。
紙やノートなど
これはどちらでも良いです。個人的には、ノートって勿体ないような気がするのでチラシの裏なんかがお勧めですが、ノートに努力の跡が残っていくのが好きな方も居ます。
これは本当に好みなので、どちらでも。
黒のペンと赤のペン
黒のペンで書き取りを行い、赤のペンを使って答え合わせをしていきます。
例えばIELTSなどの手書き試験を控えている方は、速く書く練習を同時にするために、鉛筆やシャーペンなどを使っても良いですが、普通は手が疲れないように、書き味の良いペンを使うことをお勧めします。
ディクテーションの具体的なやり方
1、音声だけ聞く
まず、音声だけ聞いて、もし内容についての質問(理解度チェック)などがある教材であれば、それに答えます。
この時、スクリプト(台本のこと。音声の内容を書いてある英文)を読まない状態で行います。
つまりざっと内容を理解するということです。
これには目的があり、
・会話の状況だったり、リスニングのテストはだいたいそういう形式なので慣れておく
・緊張感をもつ
ということがあります。
精読・精聴は大事なのですが、緊張感をもった一発勝負の練習もしておかないと、いざという時にうまく聞き取りができなくなってしまいます。
2、精読する
実はディクテーションにはいくつかやり方があるのですが、私が絶対におススメしたいやり方が、実際に「書き取り」を始める前に、必ずその文章の意味を理解しておいてほしいです。
私の意見では、意味がわからないまま書き取り作業をやっても、効果が半減します。必ず先に精読をやっておきましょう。
一般的なディクテーションでは、スクリプトを見ずに書き始める方法もあります。それでも私は、指導では先に精読させます。意味を知らない文を書き取らせると、生徒は音とスペルを当てることだけに必死になり、答え合わせのあとも文の内容を説明できないことが何度もあったからです。
先に意味と構造を理解しておくと、書けなかった原因を「単語を知らなかった」ではなく、「知っているのに音で認識できなかった」と切り分けられます。ディクテーションを単なる根性テストにしないための、私の指導上のこだわりです。
精読というのは、辞書やネットでわからない単語や表現を調べたりしながら、文章の意味を完全に把握することです。
最後に日本語訳があればそれと照らし合わせて、文法や表現などでわからない箇所はすべてクリアにしておきましょう。
3、ディクテーション開始
①と②の下準備が終わったら、いよいよディクテーションの開始です。
音声を流しながら、黒ペンで紙に書き取っていきましょう。
とにかく書きなぐる、という感じです。
ここでやりがちなのが、単語一つ一つで止めてしまうこと。書き取れなかったとしても、その分のスペースを空けておき、最低でも一文章の単位で行いましょう。
最初は全然聞き取れない&書き取れなくて泣きたくなると思います。でも、とりあえず最後までやりましょう。
そのためにも、教材は適切な長さのものを選ぶのがとても大事です。
最後までやったら、また最初に戻ります。
2回目以降は、前までに聞き取れなかった箇所を中心に、つまり穴を埋めていくような形で書いていきます。
これを、穴を埋め終わるまで繰り返します。
しかし、多くても5回くらいにとどめましょう。あまり多すぎても、疲れるだけで意味がありません。実際にやってみると、5回でもへとへとになると思いますよ。
4、答え合わせ
赤ペンを使い、答え合わせをしていきましょう。教材に付属しているスクリプトを使用して、自分が書いたものに赤ペンを入れていきます。
思ったより、間違いが多いな!
と思うはずです。
冠詞や前置詞、スペルなど細かいところにも気を配りましょう。私がレッスンでディクテーションをやると、だいたい見逃している箇所が5か所くらいありましたので、自分でやる場合は、必ず2回は見直してください。
5、再度聞く
再度、音声を流して聞いていきましょう。この時、スクリプトではなく自分の赤ペン入りの解答を見ながら聞きます。
特に赤ペンが入っている箇所に集中して聴いてください。
「自分は、なぜここで間違ったのか?」
ということを分析してみてください。
発音があいまいな単語などは別途ノートに書きだし、しっかりと覚えていくと良いですね。
答え合わせでは、赤字の数だけでなく、原因を次の4種類に分けてください。
- 音の問題:知っている単語なのに、連結・弱化・脱落で聞こえなかった
- 語彙の問題:単語そのものを知らなかった
- 文法の問題:冠詞・前置詞・時制などを文の形から予測できなかった
- スペルの問題:音は分かったが正しく書けなかった
音の問題が多ければ、赤字の部分を見ながら音声をまねます。語彙や文法の問題が多ければ、ディクテーションだけを増やさず、単語と精読へ戻ります。スペルだけの間違いなら、聞き取り自体はできている場合があります。
ディクテーションをやめる・教材を変える目安
3回ほど続けてほぼ書き取れるようになった音声は、卒業してかまいません。同じ教材を完璧になるまで何十回も続けるより、赤字の部分を確認したあと、音読やシャドーイングへ移します。
反対に、スクリプトを読んでも半分ほどしか意味が分からない、5回聞いても空欄が大きく残る、1分の音声に1時間以上かかる場合は、根性不足ではなく教材の難易度が合っていません。短く、易しい音声へ変えてください。
このステップ5については、机に向かう必要はなく、スキマ時間での学習も可能です。下記の記事もご参照ください。
ディクテーションのお勧め教材
ディクテーションで使う教材の選び方
難しい教材を選ばないこと
決して自分のレベルより難しい教材は選ばないこと!これは大前提です。
パッとページを見て、「簡単だな」と思っても、ディクテーションは負荷が高い勉強法なので、けっこう大変です。やりにくいものだとすぐに挫折してしまいます。
初級者でディクテーション初心者は特に、記載されている英文が「パッと見て意味がわかる」ということを大事にしましょう。
1回分が短め
ディクテーションはとにかく時間・エネルギーを消費する勉強法なので、おっくうになってしまいがち。毎回やるたびに1時間も2時間もかかっていては、絶対に続きません。
英語は続けないと意味がないので、まずは続けることを第一優先に考えましょう。
そうすると、やはり1回分が短めで、1日に割く時間としてはとして30分くらいが一番良いです。
1回分を半分ずつなどにしても良いのですが、やはり1回分をやるほうが達成感がありますよね。この達成感も、続けるための重要な要素です。
下記に、おススメ教材を具体的に紹介していきますね。
お勧めの教材【初級者向け】
みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング
これは私が色々なところでお勧めしている教材です。
なんといっても、シンプルなところが良い。
そして、1回分が短いという条件も満たしています。個人的にはとても丁度良い量。
ハイパー英語教室中学英語長文
これもちょうど良い量です。上の「みるみる」より少し易しめですね。
解説が非常に詳しいので、初級者の独学に最適。
※ディクテーションのページがあり、空欄の穴埋めになっていますが、これは無視して、前文の書き取りを行うことをお勧めします。
お勧めの教材【中級者向け】
All In One
すごく地味な本ですが、解説も充実していて、文法別になっているのもポイント高い。
10秒リスニング
内容がビジネス・時事系なので、上の「All In One」より若干難しめかも。
お勧めの教材【中上級~上級者向け】
中上級になってくると、YouTubeやTEDなど、普通にネイティブも視聴するような(つまり英語教材ではない)動画や音源を使ってディクテーションができます。
特にTEDは、スクリプトが英語と日本語、高い確率で両方ついていますし、何よりたくさんの知識が得られるのと、世界基準のプレゼンのやり方を学ぶことができます。
プレゼンをやることは無い、という人でも、普通の英会話でも説得力のある話し方、話の組み立て方を体感することができます。
アプリもありますので、スマホでディクテーションしやすいですよ。
このような動画を使う場合でも、易しめのレベルで短いものを選ぶことを心掛けてくださいね!
ディクテーションのよくある質問
全部手書きにする必要がありますか?
手書きでもパソコン入力でもかまいません。IELTSなどで手書きが必要なら紙、入力のほうが続けやすいならパソコンを使ってください。重要なのは、聞こえなかった場所を空欄のまま残し、スクリプトと比べることです。
シャドーイングとどちらを先に行いますか?
何が聞こえていないか分からない段階では、ディクテーションで赤字の場所を特定します。音と意味を確認したあと、同じ音声をまねて発音するなら、シャドーイングへつなげやすくなります。
海外ドラマやニュースを使ってもよいですか?
スクリプトがあり、10〜30秒ほどに区切れ、読めば内容が分かる音声なら使えます。専門用語や固有名詞が多い素材は、聞き取りではなく知識のテストになりやすいので避けてください。
聞き取れる英語を増やしたい人へ
ディクテーションは、聞こえない原因を細かく調べる精聴です。一方、実際の会話や動画についていくには、細部を調べる時間だけでなく、英語を大量に聞く時間も必要です。
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